Rhyme Line:タイ、ヒップホップ界のタイムライン

- 恋愛ソングの帝王ILLSLICKが新曲「ター・トゥー・トン・ルアック(もしも選ばなければいけなかったら)」で復活、短期間で再生回数2億回を記録
- YOUNGOHMが「シューイ・ムーイ(無視)」で4週にわたってストリーミングのトレンドに
- UrboyTJが新曲「マイトープ(答えない)」をリリース、1ヶ月で再生回数1000万回を記録

    ここ2年ほどの間、「ラップ」あるいはヒップホップ音楽が音楽チャートで再び盛り上がりを見せている。多くの有名アーティストたちがタイ音楽市場にヒット曲を送り出す一方で、The Rap-per、Show me the moneyという2つのラップバトル番組が人気を博している。この2つの番組はビジネス的にはライバル的な存在であるが、力を合わせてヒップホップ界の中心的コミュニティーを形成することを理想としている。そして、ラッパーたちが集まって、曲やライム(韻を踏んだ詞)を創り上げ、社会現象を生み出し、放送が回を重ねるごとにヒップホップ音楽をツイッターのトレンドにのし上げてきた。

    ところで、あなたはタイのヒップホップ界でいつどんな現象が起こってきたか、覚えているだろうか。

〝ユンナー マイトン・マー・ユンナー アイ・プアン・バーバー・ゴー・チョープ・マー・ワー ゴー・チョープ・マー・ワー マーワー マーワー マーワー ワー・ラオ・チュイ マー・ワー・ワー・マック・ンガーイ(うざいよ 邪魔するな 馬鹿野郎が寄ってきて 寄ってきて 言うんだ 言うんだ 言うんだ 俺はでたらめだって ちゃらんぽらんだって)〟「うざい」
アーティスト: ジェー・ジェッタリン・ワッタナシン(J Jetrin Wattanasin)

    20年前にヒットチャート入りした曲のひとつで、他に類を見ない独特のラップが特徴的。言葉の制約なしに感情を表現しており、誰も気がつかない小さな音楽的実験のようだとも言える。そして、1995年に弁舌な青年ジョイー・ボーイ(Joey Boy)が音楽界に足を踏み入れ、レゲエのテイストを含んだクールなライムを発表して、音楽好きの人たちに新たなジャンルの音楽の存在を知らしめた。独特な早口のラップを通じて、人々は少しずつヒッポホップとは何かということを知っていき、やがて「ラップ曲」という言葉が定着するようになる。

    ジョイー・ボーイがタイ音楽界のメインストリームにラップ曲を登場させて間もない頃、アングラ系ヒップホップ曲も少しずつ知られるようになり、エーエー・クルー(AA Crew)やダージム(Dajim)といった腕のあるラッパーたちが競い合って、強く荒々しいライムにのせて、社会や文化、政治に辛辣な言葉を浴びせるサビの曲を放った。彼らが感じ取った、言語や音楽の制約を受けない日常を反映させたもので、それが新しい魅力となり、タイ音楽界を今日まで引き続き揺るがせてきた。この記事では、過去の流行的現象を時空の扉のように並べ、読者のみなさんに時を遡って昔の楽しい時間を体験してもらえるようにすることがねらいである。

1993年

〝トゥン・ロッヂャティット・ヤンガイ ラオ・ゴー・カーイ・マイペーン ニー・クラップ・カーオムーデーン ナン・ンガイ・カーオマンガイ(どれだけ渋滞していても 高く売ったりはしない カーオムーデーンです カーオマンガイになります)〟「心の交差点」
アーティスト: ティーケーオー(TKO)

    ポップスが町で流行する中、多国籍ユニット、ティーケーオー(TKO)がヒップホップを音楽のメインストリームにのし上げようと、新たな試みを行っていた。ダボダボの服をまとい、大きなネックレスを首からかけて、都会人の生活を愉快な音楽にのせて歌った。当時、それほど人気は出なかったが、ヒップホップを愛する人たちにインスピレーションを与えたという点では、これが始まりだったと言えるだろう。話は逸れるが、20年以上が経った今、うちの近所はいまだに渋滞している。

1996年

〝エーポートサレーナーパン ポートナーパンサレーナーポート〟「エー・ポート」
アーティスト: ジョイー・ボーイ(Joey Boy)

    え?エーポート何だって? 初めて聞いた人は変わったサビの部分に違和感を感じただろう。しかし、耳に残るメロディーで、何度も繰り返して聞きたくなる曲だ。エー・ポートはレゲエを愛するラッパー、ジョイー・ボーイ(Joey Boy)が初めて作った、他の人の曲とは違う早口のラップスタイルの曲である。ジョイー・ボーイはレーベル、ガンコークラブ(Gancore Club)の主宰者で、多くの曲を世に送り出し、タイ人をラップ曲に馴染ませ、ラップ曲を楽しむ下地を作った立役者である。

2000年

〝マン・ラップ・マイロン・ウォーイ プアット・カバーン・ヂン・ウォーイ ブア・ヂンヂン・ウォーイ プアット・ルークター・マン・ヌアイ・カーヤー マン・ブア・ラアー・ウォーイ(眠れないぜ マジで頭が痛ぇーぜ 飽き飽きするぜ 目も痛いし体もだるい うんざりするほど飽き飽きだぜ)〟「HEA WOY」
アーティスト: エーエー・クルー(AA Crew)

    もしあなたが20年前にアングラ系ヒップホップの信奉者だったとしたら、タイのアングラ系ヒップホップ界の伝説とも言えるエーエー・クルー(AA Crew)のことを当然知っているだろう。ジョイー・ボーイとタイタニウム(Thaitanium)のカン(Khan)が中心となって、腕のあるラッパーを集めたユニットで、荒々しいライムと重厚なビートの音楽で社会にパンチを放ち、音楽ファンたちがオリジナルのヒップホップらしさに触れる機会を与えた。

2000年

〝ポム・ダージム・レップ・タイ クン・マイファン・ダインガイ ター・マイファン・ヂャ・シアヂャイ・ヂャ・ボークハイ(俺、ダージム、タイのラッパー なんで聞かないんだ 聞かなかったら後悔するよ、言っとくけど)〟「Da Jim Rap Thai(タイラップ・ダージム)」
アーティスト: ダージム(Dajim)

    おふざけ感いっぱいのアングラ系ラッパー、ダージム(Dajim)が、独特のライムで聞く人を楽しませてくれる。曖昧な表現で、社会を辛辣に風刺ししたダージムの曲は、誰のことを構うこともなく、そのせいで、彼は更生施設に入ることになり、再び曲を作れるようになるまで一年近くを要した。曲作りにすべてを捧げたラッパーだと言えるだろう。

2004年

〝クー・ユー・ナイ club like タタタタッタッ タタタタタッタッ タタタタッタッ OK!(俺はクラブにいる タタタタッタッ タタタタタッタッ タタタタッタッ オーケー!)〟「Yak Lai(肩を上下させる)」
アーティスト: タイタニウム(Thaitanium)

    クラブに行って、Yak Laiを聞かなかったら、クラブに行っていないも同然だ!タイの音楽界に影響を与えた最初の世代のラッパー、タイタニウム(Thaitanium)のヒット曲である。タイタニウムはアメリカンスタイルのヒップホップのレーベル、タイタニウム・エンターテイメント(Thaitanium Entertainment)の主宰者で、このレーベルにはたくさんのアーティストが所属し、これまでに数多くの良質の曲をリリースしてきた。

2006年

ユーナイ・パーティー・ローン・ヤンカップ Fire トゥー・スワイ・セクシー Hot ヤンカップ Fire(パーティーにいるとFireのように暑い 君はきれいでセクシー、FireのようにHot)〟「Fire」
アーティスト: ブッダブレス(Buddha Bless)

    2006年にヒットしたホットな女性を歌ったこの歌は、赤・青・黄の信号の3色をトレードカラーとする仏法派のラッパーグループ、ブッダブレス(Buddha Bless)の曲である。ダンスホールレゲエで、他にはないヒップなブッダブレスの曲を聞くと、リスナーたちは体を揺らし、ヒップを振って楽しみたくなる。

2011年

〝チャン・マクチャ・ターム・トゥー・ペンプラヂャム・ワー・トゥーナ・ラク・チャン・マイ(僕は君によく聞く 君は僕を好きかって)〟「ラック・ミヤ・ティースット・ナイ・ローク(世界で一番妻を愛している)」
アーティスト: イルスリック(ILLSLICK)

    イルスリック(ILLSLICK)は、北部出身のアングラ系ラッパーである。ゼロから出発して、曲作りをし、自分に才能があることを知らしめ、スロージャムな曲をネットで配信した。クールな歌声に北部方言が混じる歌は、ラップ曲をラブソングに変えてしまう魅力があり、当時の若者が誰かを口説くときには、イルさんの歌に自分の気持ちを代弁させるのが流行ったほどであった。


2012年

    RAP IS NOW:音楽を愛する人たちが集まって何かをやりたいというアイデアから生まれた企画。ハブ・バーをリングとして、ラップ愛好家たちがその腕前を競い合うヒッポホップ・パーティーで、初回はそれほど知られてはいなかったが、Rap Is Nowのスタッフがヒップホップのリングをインターネット上に設け、隠れたラッパーたちにスポットライトを当て、その才能を披露できる場を提供した。

2016年

    The War is On:Rap Is Nowのチームによる、タイ全国から集まったラッパーたちがラップバトルを通じて、一対一でその腕前を競う番組。オンラインの世界でも大きく話題となった。凄腕のラッパーがこの番組から誕生している。

優勝者: Mc.King、Repaze、Oak

2016年

〝クン・ナ・ナーンエーク ポム・ナ・トゥアラーイ トーン・ヂョプ・クン・ゴー・ルー ポム・ゴー・トン・ターイ(あなたはヒロイン 僕は悪役 最後にあなたは知る そして僕は死ぬ)〟「Villain(悪党)」
アーティスト: ユアボーイ・ティージェー(Urboy TJ)

    かつて流行に敏感な子どもたちのアイドル的存在だった男がプロデューサーに転向。ポップな雰囲気の混じったヒップホップ曲を作り、ロックスター的なラッパーとしての才能を披露した。10年以上にわたる音楽活動の経験のおかげもあって、作る曲すべてがヒットチャート入りするティージェーは、今、目が離せない存在となっている。

2017年

〝トーンニー・ヤンマイダイ・ノーン・ルーイ・ヂャ・シップモーン・チャーオ ゴー・ピー・マイク・マイクーイ・ティー・ヂャ・プローイ・ハイ・オーム・ダーオ(午前10時になろうとしてるのにまだ全然寝ていない マイクさんがテンションを下げさせてくれないから)〟「Choey Moey(無視)」
アーティスト: ヤンオーム(YOUNGOHM

    ゼロから曲作りを始めたもうひとりの新人ラッパーがヤンオーム(Youngohm)である。独特な小ぶしをきかせたスタイルで、Choey Moey(無視)というヒット曲は再生回数1億回を記録。さらに、ストリーミングチャートでも4週にわたってトップチャートにランクインした。その頃、どこで誰に会っても口を揃えて「まだ寝ていなーーい!」と言っていたので、この曲は夜型人間にとってのヒット曲だったと言ってもよいだろう。

2018年

The Rapper

    Workpointチャンネル放送のラップバトル番組。抜群の腕前を誇るプロデューサー、ジョイーボーイとカンが率いるふたつのチームが、ユアボーイ・ティージェー(Urboy TJ)、トン(Twopee)、ゴルフ・ファッキンヒーロー(Fukking Hero)、プーヂャーン・ロンマイク(PMC)の4人のコーチとともにバトルをしながら、タイの素晴らしい新人ラッパーを発掘していく。

優勝者: IRON BOY

2018年

Show me the money

    チャンネル24、true4uが放送する韓国の有名番組のタイ版。激烈なラップバトルが繰り広げられる。新人ラッパーがバトルのリングに上がるために金のネックレス獲得を目指し、9人のプロデューサーと一対一でオーディションを行う。

優勝者: ナーイナ

Nitsanart Nilthongkum

人生を謳歌する卒業間近の大学生。人、空、音楽と会話するのが好き。ほとんどの時間を音楽を聞いて過ごす。ときには音楽に自分のことを聞いてもらうことも。

Natuschol Chindakham

デザインを専攻するチェンマイ出身の大学生。絵を描くと気持ちが落ち着くというほどではないが、22年間ずっと絵を描き続けてきた。